昨日、エレベーターに思いを馳せたついでに、蛭子能収の珠玉の名作を集めた漫画作品「地獄に落ちた教師ども」に収録された、エレベーターが効果的に出てくる作品を思い出した。
多感な十代の頃、私はガロという漫画雑誌に魅せられ、いわゆるガロ漫画家の作品を愛でていた。そのうちの一人が蛭子能収であった。その頃からテレビタレントとして人の好さげな中年男性といった立ち位置であったが、その実、漫画作品の方は非常に過激であった。
ぱっとしない中年男性が主人公で、主人公が突如怒りに身を任せ人を殺めているような作品が大半であった。そのような作品の中で、タイトルは覚えていないが、エレベーターの出てくる印象的な話があった。主人公である父親を訪ねて父の職場までやってきた息子が一緒に帰宅する際、会社のエレベーターに乗り込んだ。父親が息子にエレベーターのボタンを押したのかと尋ねると、一番下のボタンを押したと答えた。父親はその答えに愕然とした。何故ならそのエレベーターの一番下のボタンは地獄行のボタンだったからだ。
影響されやすい私は、この作品を読んでしばらくの間、毎回エレベーターに乗ると一番下のボタンを確認していた。未だに時々、エレベーターに乗り込むと、「地獄」のボタンは無いのだな、とぼんやりと思う。