勝どきのオアシス、かねます

今日、8月10日はハイボールの日だそうだ。

勝どきにはタモリも訪れた事があるという名店「かねます」がある。

以前、タモリ倶楽部「下町のハイボールを飲もう」の回でもタモリ本人が語っていた。ちなみに、その回の収録会場となった三ノ輪の居酒屋「遠太」は食べログ情報によると既に閉店しているらしい。

かねますは立ち飲みスタイルのカウンターのみの店で、店員はカウンターの中にいる大して愛想のよくない男性二人が切り盛りしている。地元密着型の店であるが、過剰に客に干渉しないスタイルに好感が持てる。そして何より、出される料理の一つ一つが素晴らしいのだ。

クレジットカードすら使用出来ず、音楽もかかっていない武骨な立ち飲み屋であり、その上、一品の単価が1100円~2500円という強気の価格設定にも関わらず、週末ともなると行列ができる店であった。

緊急事態宣言の前までは。

新型コロナウィルスの影響により、行列のできる人気店と言えども閉店を余儀なくされたが、流石はかねます。5月8日から営業時間の変更がありつつ営業再開となった。

私は基本的には時間が許せばかねますに立ち寄るようにしているが、私はしがない勤め人の為、週末しか時間が取れない。かねますは平日は夕方のみの営業だが、土曜日だけは昼間営業しており、土曜日をめがけて行くようにしている。しかし、いくら私が暇人とは言え毎週土曜日の昼間、何の予定も無いということが意外に無く、月に2回程度の利用頻度だ。

とは言え、行くたびにあれだけカウンターにひしめいていた客は、営業再開後も2人か3人くらいしかいないし、行列も当然ながらなくなってしまっていた。

しかしだ。先日、やっと時間をみつけてかねますに行ってみたら。なんと10人以上の見覚えのある面々がカウンターに並んでいるではないか。

流石、勝どき。流石、かねます。良識のあるお客様が多いなと思った。見覚えのある面々とは、私が一方的に顔を覚えているだけで、話した事も無い為、どういう人たちなのかは知らないが、皆さん総じて静かに食事を楽しまれる品の良い方々だ。

小池百合子の都民へ対するわけのわからない自粛要請など、心からどうでもよいと思う。好きな店で食べたい料理を食べるという日常の方が、私は尊いと思う。

下町のハイボールと言えば天羽、とタモリ倶楽部で言ってました。

新宿眼科画廊へ行ってみた

2014年、自称芸術家が逮捕されたというニュースが飛び込んできた。女性器の3Dデータを知人男性に送ったことが、わいせつ物頒布等の罪となった。

その時、「自称芸術家」という意味不明の肩書が面白いと思った程度で、私は芸術としての女性器に思い入れも無かったので、そんな事件があったことなど忘れていた。

それから6年経った2020年の今年、私は自称芸術家「ろくでなし子」を再び目にした。6年の間、彼女は外国人ミュージシャンと国際結婚し、出産し、控訴していた。

彼女は真の意味でのフェミニストであることを知った。彼女の主張は一貫性があり、非常に好感が持てた。

私は1年程前に流行した「Kutoo運動」なる、ハイヒールに代表されるような服装規定を女性に課すことを問題視したフェミニスト達の活動を冷ややかに見ていた。

元々はハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクシャル・ハラスメントを告発する際に「MeToo運動」として被害女優達が賛同し、その結果、大物プロデューサーは逮捕されるに至った。

しかし、「KuToo運動」はどう考えてもそれを劣化させていた。靴と苦痛をかけた駄洒落はデーブ・スペクター的センスのキャッチコピーであった。

話を戻そう。真のフェミニスト・ろくでなし子である。

彼女の作品が7月22日まで、新宿眼科画廊「バースト・ジェネレーション:死とSEX」展で展示されているというので山手線を半周し、はるばる新宿まで行ってきたのである。

彼女の「MANKO」というキャラクターは女性器を簡略化させたサッパリしたデザインで、クマモンと同じく凡庸なキュートさがあった。

MANKOのロゴはどこかで見たことのあるような丸っこいフォントのロゴで、既存の玩具メーカーを踏襲しており、そのセンスもよいと感じた。MANKOはサンリオのドル箱キャラ「ハロー・キティ」のおもちゃの家の中で、同じくキュートで凡庸な警官人形とリビングでくつろいでいる。

キティちゃんの家の横は交番にも見える建物があり、鉄格子の中にMANKOがたたずんていたりとなかなか示唆に富んだ作品であった。

芸術家・ろくでなし子の作品の隣にはガロ系漫画家である根本敬の奇妙な作品が展示されていた。美しくない容姿の男女の半裸の写真であるとかだ。

根本敬は私がガロを愛読していた1990年代後半、「特殊漫画家」として活躍しており、醜い中年男性が主人公の救えない話ばかりの作品に惹かれた事を思い出した。美しい男女が恋をしたり、恋を失ったりする漫画に溢れている中、リアリズムを表現した根本敬に共感した。

「鬼畜悪趣味カルチャーの先駆者」という紹介にも、私は「なるほど」とうなずいた。

他の作家の作品も様々で、朽ち果てた遺体の写真や、人間の皮膚に直接つりばりのようなものを打ち込み体を吊り上げている写真に、思わず一歩、後ずさりしてしまう衝撃作品の数々であった。

私が最初に買ったのは他のバージョンの「生きる」でした。