香港では民主化運動の活動家が香港警察に逮捕され、レバノンの首都ベイルートでは港に保管されていた硝酸アンモニウムが原因となり都市部で大爆発が起きた。
私は言論の自由を享受し、区都民税を納め、映画館へゆく。
都バスに揺られて日比谷へ行き、アメリカ映画「透明人間」を観た。
ベッドから抜け出すセクシー美女の切羽詰まった表情で映画は始まる。ベッドルームは海を一望できる絶景。海辺の小高い丘の上に建つ美しい家から美女は抜け出す。美女の名はセシリア。彼女の夫は科学者で巨万の富を得ていた。しかし、束縛の激しい夫に耐え兼ね、妹の助けを借り、夫の下から抜け出したのだった。
妹の友人宅に身を隠すも、いつか夫に見つかるのではと恐怖に怯え、外に出られず家の中にこもる日々。そんな時、夫が亡くなったとのニュースが飛び込んできた。セシリアは信じられなかったものの、多額の遺産が彼女に残されていた。
ところがほどなくして彼女の身の回りに奇妙な事が起こり始め、夫が透明人間となって近くにいることを確信する。しかし証明することが出来ない。夫の生存を証明しようとするあまり、それが裏目に出てしまい、次第に周囲から孤立していく…
セシリアの夫エイドリアンは大金持ちで、ミニマリストの境地のような非常にセンスのよい家で暮らしている。おまけにエイドリアン、よだれが出そうになるほどマッチョでセクシーで男前だ。いくらセシリアが美人と言えども、代わりとなる女性などいくらでもいるだろう。彼女に固執する理由がよくわからない。
ヒロイン・セシリアにも初っ端から疑問がある。あんな素敵な家での生活をそうやすやすと手放す理由がハッキリしない。劇中、彼女は妹と友人に「夫の束縛がひどくて…」という話をするが、片方の話だけを聞くのはフェアではない。あのセクシーな夫とあの素敵な家を離れる根拠としては弱いと感じた。
この作品はエリザベス・モスの表現する焦燥感、緊迫感、絶望感のリアルさ一本勝負の映画だと言えよう。攻撃されるにつれ強くしたたかになるところも見どころだ。透明人間の透明っぷりも、なるほど、と納得できる演出だ。そんな透明人間と始終対峙するエリザベス・モスの演技に多大に助けられた本作はヒロインのハラハラドキドキに観客も共にハラハラドキドキするサスペンス系エンタテイメント作品であった。
セシリア役のエリザベス・モスであるが、何処かで見たことがあると思ったら2015年のイギリス映画「ハイ・ライズ」に出演していた。
ハイ・ライズはトム・ヒドルストン主演。ヒロイン役はシエナ・ミラー。
よい俳優が沢山出ているにもかかわらず、B級作品。