年末の映画納めはヒューマントラストシネマ有楽町で公開中の「家族を想うとき」であり、明日は我が身…と身につまされる、貧しさの断片を描いた素晴らしい作品であった。2020年の映画始めはシネマシャンテ有楽町で公開中のアメリカに実在したシリアルキラー「テッド・バンディ」であった。
私がテッド・バンディを知ったのは12年前の2008年だ。若松孝二監督の名作「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」にて、1972年に連合赤軍が起こした企業の保養所「あさま山荘」にて人質を取り立てこもった事件について知った。連合赤軍が最後に起こした事件が「あさま山荘」の立てこもり事件であったが、あさま山荘へたどり着くまでに彼らのアジトにて行われたリンチ殺人に焦点を当てた作品であった。この作品により、あさま山荘事件が発生する過程に18名の連合赤軍は「自己批判」や「総括」の名の下、リンチにより8名の死者が3か月あまりの期間で出たことを知った。陰惨な事件があるものだと戦慄したわけだが、「山岳ベース事件」あるいは「連合赤軍総括リンチ事件」と呼ばれるこの事件を調べるうちに、世界中の有名な殺人事件について項目ごとに丁寧にまとめられている素晴らしい個人サイト「+MONSTERS+」の存在を知った。例えば、この連合赤軍の事件については「リンチ殺人」の項目の中に入っており、「昭和残酷史」の項目からも当記事へのページにリンクが飛ぶようになっていた。「カニバリズム」やら「脳障害」やらどれからクリックすればよいのか迷うようなタイトルが並ぶ中、このサイトの一番最初の項目である「MONSTERS」の5番目に配置されていたのが異色の男前殺人鬼「テッド・バンディ」であった。このサイトの素晴らしい部分は、殺人事件そのものだけではなく、殺人鬼の幼少期からの家庭環境、図らずも怪物を世に送り出すことに深く関わる家族の生い立ちまでを詳らかに説明しているところである。かくして私生児として生を受け、それを憂いた祖父母に母親を姉と教えられ、差別主義者の祖父母を両親と思いこまされ育ったテッド・バンディを知った私は2020年に本作品を鑑賞することとなった。
「テッド・バンディ」の作品だが、本作品は彼が殺めなかった彼の恋人、リズが書いた手記が原案となっており、リズとの出会いから彼の死刑判決までの割と短めの期間について、大半がリズ視点で描かれており、よって、彼のロマンチストでモテ男振り、殺人鬼と思いながら交際を続けるリズの葛藤について知る事が出来る作品であった。そんなわけで、その後、テッドの標的となるような女性、黒髪・ストレート・ロングヘア、清楚で知的、といった被害者像についての描写などは無く、またそのような女性を狙うこととなった経過についても当然何も表されてなかった。ただ、本作のヒロインについては「+MONSTERS+」には記載がなかったが、ウィキペディアでは調べることが出来る。全米を震撼させた殺人鬼が恋焦がれる一面や、刑務所に拘留されていても性行為により女性を妊娠させることが可能である、というのは新しい発見であった。