新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の傍ら、落語教室について思い出したこと②

7都道府県にて非常事態宣言

4月7日の夜、緊急事態宣言が7都道府県に出され、デパート・映画館・美術館の営業自粛は週末のみならず、4月8日から5月7日までの1か月間となった。

都内の演芸場は5月6日まで興行自粛を発表した。

この期間、人の集まるイベントは全て中止または延期となった。

引き続き、外出は生活に必要な最小限での生活を求められた。

初天神の台本作成

前回説明したように、柳家小三治師匠の「初天神」の台本作りにとりかかったのであるが、初天神には小さめのオチがちりばめられている事に気が付いた。

初天神のあらすじ

天神様へお参りに行こうとする父(夫)に、母(妻)が外出中の息子も連れて行くように頼むが、嫌がる父。

そこへ息子が帰宅し初天神のお参りをしたいとせがみ、しぶしぶ連れていくことに。

承②

案の定、連れて行った息子は道中にある露店で何かとねだり、父は拒むが結局は根負けして買い与える羽目に。

最終的に凧が欲しいと息子が駄々をこね、仕方なく買い与えると次は凧あげしたいと言い出す始末。

父、仕方なく凧あげに付き合うも、自分が楽しくなってしまって息子そっちのけで凧あげに夢中になり、息子に呆れられる。

面白い落語はストーリーではない!

あらすじだけ読むとなんとも凡庸な話だ。

しかし、面白い映画も面白い落語も、重要なのはストーリーでは無いと私は常々思っている。

脚本と発せられる言葉やしぐさによるディティールの説得力なのだ。(③へ続く)

新型コロナウィルスによる外出自粛の傍ら、落語教室について思い出したこと①

コロナによる自粛の嵐

都内の百貨店や映画館、演芸場は週末の営業を自粛している。

まさかこんな日が来るとは誰が予想しただろう。

閑散とした繁華街やオフィスビルの谷間に漂うゴーストタウン感。

コロナによる各所への影響

この騒ぎの中、オリンピックは延期され来年開催となった。

志村けんはコロナウィルスに感染し亡くなり、堀江貴文はもうホリエモン万博はしないと公言し、政府はマスク2枚を各世帯に配布すると公表した。

このどさくさに紛れて北朝鮮はミサイル発射を行った。

落語教室からのメール

そんな中、私の受信メールフォルダに落語教室から次回、7月から始まる落語教室の案内メールが届いていた。

貼り付けられたURLをクリックすると、10人の定員に対し、既に9名が申し込んでいたので、急いで申し込みを行った。

落語好きが高じて落語家から落語を習うことに

私は落語好きが高じて、去年の夏から落語を習っている。

講師はプロの落語家だ。

最初の先生は二ツ目の噺家、柳家小んぶさんだった。

最初、というのは、初回以降は他の講師から習っているからだ。

夏に通い出した頃は、小んぶさんに時間があり、週に二度程お稽古をしていたが、本業が忙しくなった…からかどうかはわからないが、週に一度の稽古になってしまった。

落語教室の運営者に相談したところ、他に私の都合のよい曜日に教えている真打ちの噺家・桂文雀師匠がおられたので、去年の秋の稽古から文雀師匠のお稽古に通っている。

素人落語の稽古開始前のガイダンス

実際の稽古が始まる前に、初心者に向けてガイダンスが行われた。

ここでは

●高座で実際に使用するてぬぐいと扇子が配られ高座上での使い方

●上下(かみしも:噺家が高座で右を向いたり左を向いたりする動作)について

●お稽古ではプロの落語家の前で覚えた落語を演じて見せるので、ちゃんと台本を暗記してくること

●個々の落語の持ち時間は15分なので、演目をその時間内に収まるようにすること

等々の説明を受けた。

また、希望する演目や自分が高座で使う名前、高座名を伝えた。

まずは台本を作りから

ガイダンスを終え自分の話す演目が決まり、台本を作ることになった。

私は元々ファンだった柳家小三治師匠の「初天神」のYouTube動画を繰り返し見た。

初天神はメジャーな演目でもあり、台本はグーグル検索すれば出てくるのでコピペし、小三治師匠の動画に寄せて編集した。

持ち時間を越えてしまった

しかし、小三治師匠の動画では枕(落語に入る前にする話)を省いても20分を越えていた。

そこで本来はしつこいやり取りが魅力の箇所がただの会話になってしまい小さめのオチを泣く泣く諦め、時間内に収まるようにした。(落語の魅力はこういう小さなオチが随所にちりばめられたところなのだ。それはまた別の話)

ぞろぞろ

落語教室の発表会のトリ(一番最後)で桂文雀師匠がされた演目についてご紹介します。

ぞろぞろは古典落語

古典落語とは(落語の種類)

元々は上方落語(かみがたらくご/大阪・京都で主に演じられる落語)として作られ、その後、江戸落語となった演目です。

あらすじ

茶店の老夫婦

稲荷神社の茶店に老夫婦がいました。古くからある参道沿いに店はあるのですが、近くに新しい参道ができたせいか、客様も少なくなり、生活に困窮した夫婦はお稲荷様にお参りに行き、商売繁盛のお祈りをしました。

1足のわらじ

ある雨の日、茶店に客が来て、お茶を注文したあと、ぬかるんだ道で足が汚れるのは嫌だと天井から1足だけぶら下がったわらじを買います。

わらじが次から次に…

その客が店を出ると、新たに客がやってきて、わらじを1足求めます。老夫婦は最後の1足が売れてしまって何も売る事ができないと伝えますが、天井から1足ぶら下がっているわらじがあると言い、老夫婦は驚くものの、そのわらじ1足を売り代金をもらいます。おかしなことがあるものだと老夫婦が思っていると、さらに客がやってきて、やはりわらじを買い求めます。今度こそ「売り切りれました」と伝えると、先ほどの客と同じように、「天井からぶら下がっている」と言うではありませんか。1足わらじを売るたびに天井からぞろぞろとわらじが下りてくるのでした。

床屋の主人

お稲荷様のご利益であると老夫婦が喜んでいるところへ、近所の床屋がこの話を聞きつけます。床屋の主人も早速お稲荷様へお参りして、茶店の老夫婦のようにして欲しいと祈ります。

お稲荷様のご利益?

床屋の主人が店へ戻ると店の前が客であふれかえっています。早速ご利益があったと喜び、人をかき分け店へ入り、客のひげをカミソリで剃ると、剃ったひげがまたぞろぞろと生えてくるのでした。

素人落語会

落語家が教える落語教室

都内にはプロの落語家が落語を教えている教室がいくつもあります。先日は桂文雀師匠が教えている落語教室の発表会が行われました。

木戸銭は無料!

入場料である木戸銭は無料で両国亭で開催されました。両国亭は円楽一門会の寄席が主に行われています。

素人ながらも満席に

一人持ち時間15分で高座に上がり、女性の生徒さんも数多く高座に上がっていました。一時はお客様が沢山お見えになり、満席となる一幕もありました。

演目がかぶることも…

通常の寄席では別の落語家が同じ演目を寄席で行うのはご法度ですが、生徒の数が多く、演目がかぶることもありましたが、そこは素人ですのでご愛嬌。

トリは文雀師匠

落語教室の生徒さんの発表会ですので、色物が挟まれず、長丁場でしたが、最後のトリは文雀師匠が高座に上がられ、盛り上げてくれました。この日の演目は「ぞろぞろ」でした。

無料の素人寄席は週末の昼間

両国亭では週末の昼間によく無料の素人寄席が開催されているので、是非、足を運んでみてください。

落語家の階級

階級制度

落語家には階級があり、寄席で一番最後のトリを務めるというような場合は、相応の実力が必要となります。漫画の主人公、島耕作が課長から会長に昇進した程は多くありませんが、落語家も呼び名も変わります。下から

・前座(ぜんざ)

・二ツ目(ふたつめ)

・真打ち(しんうち)

となっています。

前座

演目が終わり、落語家が高座を降りた後に、めくり(落語家の名前が書かれた紙)をめくったり、座布団を裏返したりといった雑用をしたり、開口一番(かいこういちばん:その日の高座の最初の落語)をすることもあります。

二ツ目

前座を経た後、二ツ目となります。前座は羽織を着るのは許されませんが、二ツ目からは羽織を着て高座に上がることが許されています。前座がする雑用もしなくてよくなります。開口一番の次に高座に上がる、つまり2番目に上がることから「二ツ目」と呼ばれるようになったようです。

真打ち

「師匠」と呼ばれ、弟子を取ったり、お声が掛れば、落語会や寄席のトリを務めることが出来るようにもなります。

真打ちの由来

真打と呼ばれるようになった理由は諸説あるそうですが、その昔、江戸・明治時代の寄席では最後の出演者が寄席の照明であるロウソクを消さなければならず、ロウソクの芯を打っていた(=火を消していた)ことから、「芯打ち」となり、字を変えた「真打ち」となった、とも言われているそうです。

新宿末廣亭に行ってみた

新宿末廣亭ってどこ?

末廣亭は新宿の末広通りと呼ばれる飲食店が立ち並ぶところにあります。東京メトロ丸の内線と副都心線の「新宿三丁目」の駅、C3出口から左に曲がるとあります。

寄席の入り方

入口に「入場券売場」とあるので、こちらでチケットを購入します。ちなみに、寄席ではお代金のことを「木戸銭(きどせん)」と呼びます。

席は自由席

場内は高座と呼ばれるステージがあり、高座正面に椅子席が117席、左右の端と2階は桟敷席(さじきせき)があり、桟敷席は畳の上に座布団が置かれているので、靴を脱いで上がります。また、場内には係の人がいるので、桟敷席が空いていれば、案内してくれます。

昼の部

昼の部と夜の部の2部制で、昼の部は12:00~16:30で、途中に中入り(なかいり)という、休憩時間が15分程あります。その間にお手洗いへ行ったり、喫煙室で喫煙したり、売店で軽食を買ったりして過ごします。場内での飲食はアルコールでなければOKとなっています。

夜の部

夜の部は17:00~21:00となっています。先日行った時は人間国宝・柳家小三治(やなぎやこさんじ)師匠が高座に上がられる日ということもあってか、満席でした。

1月15日の出演者

・柳亭市楽(りゅうていいちらく/落語)

・笑組(えぐみ/漫才・南京玉すだれ)

・桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ/落語)

・初音家左橋(はつねやさきょう/落語)

・林家しん平(はやしやしんぺい/落語)

・江戸家子猫(えどやこねこ/物まね)

・柳家喬太郎(やなぎやきょうたろう/落語)

・柳家小袁治(やなぎやこえんじ/落語)

・すず風 にゃん小・金魚(すずかぜ にゃんこ・きんぎょ/漫才)

・柳家権太楼(やなぎやごんたろう/落語)

・柳家小満ん(やなぎやこまん/落語)

中入り

・寿獅子(獅子舞)

・柳家小三治(やなぎやこさんじ/落語)

・桂南喬(かつらなんきょう/落語)

・春風亭一朝(しゅんぷうていいっちょう/落語)

・柳家さん喬(なやぎやさんきょう/落語)

・林家正楽(はやしやしょうらく/紙切り)

・柳亭市馬(りゅうていいちば/落語)

落語ばかりではない

上記の出演順を見てわかるように、落語の合間に漫才やものまねが入っています。4時間も落語ばかり聞いていると疲れてしまうので、緩急をつける意味で色物(いろもの)と呼ばれる漫才やものまねが入ります。一月は正月興行ということもあり、獅子舞もありました。皆さまも是非一度、寄席で名人芸をご堪能ください。

落語って何?

笑点と落語

落語が好き、というとテレビ番組の「笑点」ね、と言われることがあります。笑点は落語家が出てきて大喜利をしていますが、落語を演じているわけではありません。落語とは舞台(=高座)の上で落語家が演目(=落語)を演じることを言います。

どこで見れるの?

都内だと、落語をはじめとする、講談や漫才を演芸場の寄席で観る事ができます。

・新宿末廣亭

・浅草演芸ホール

・池袋演芸場

・国立演芸場

・鈴本演芸場

・お江戸日本橋亭

・両国亭

・黒門亭

・神田連雀亭 etc…

他にも落語を聴きながらお食事ができるお店「小料理屋 やきもち」があります。

誰の高座を聞けばよいのかわからない

ダイヤモンド・オンラインの記事(2016年)によると、800人の落語家がいるそうです。テレビに出るような有名な落語家は数名くらいしかいませんね。高座に上がるような落語家は何年も修行を積んでいます。寄席では多くの落語家が登場するので、知らない落語家の高座や演目でもはやり面白く聞けるようになっています。

行くタイミングがわからない

演芸場にもよるのですが、昼の部・夜の部で分かれていたり、夜のみだったりします。基本的には毎日寄席は開催されています。各演芸場にホームページがあるので、そちらで確認できます。基本的には演目と演目の間に入場できるようになっています。

無料の素人落語会

都内ですと素人落語会が両国亭などで開催されています。素人ですので、無料で開催されているので試しに足を運ばれては如何でしょうか。