タモリ倶楽部2020年8月14日放送回

花火大会も夏祭りも無いお盆が過ぎようとしている。

毎度お馴染み流浪の番組タモリ倶楽部。今回は赤と白のギンガムチェックのボタウンダウンシャツにチノパンの出で立ちでスタジオに佇むタモリ。

過去に放送した「架空地図」(注・2013年7月に放送された回、『孤高の地図マニア』の回のこと。神回とも言える放送で、架空の都市『中村市:なごむるし』が登場)など、妄想の奥深さを語っているところで左から劇団ひとりが登場。

妄想の第二波が来ており、第二波の方が凄いという。そこへ初めましてと挨拶する劇作家という女性。普段から妄想して過ごしている「妄想族」だそう。光浦靖子は「バツイチ男性となし崩しに同棲を始めた」という状況(妄想)の中で生きているという。

ナレーションは渡辺美佐。今回は芸能界屈指の妄想家と一緒に和気あいあいと妄想世界を楽しむはずが… 架空世界の二大巨頭がエンジン全開。誰も知らない架空の言葉と存在しない相撲の記録に一同騒然。「創造主さんいらっしゃい!俺だけの架空ワールド」。

ゲストは芸能界屈指の妄想家がズラリ。司会進行の劇団ひとり、劇作家の根本宗子、オアシズの眼鏡の方、光浦靖子。

劇団ひとりが根本に職業柄、妄想が仕事なのではと尋ねると、それもあるが主演する俳優や女優らの私生活を妄想してしまうそう。座組を乱す人であると妄想してしまい、最悪のケースを勝手に妄想し、嫌な気持ちになってから実際の座組に入るそう。

タモリも知人の妄想好きの女性の例を紹介。姉妹で妄想するらしく、旅館の女将とその妹という設定でずっと会話をしているそう。これに光浦が「素敵ですね」感銘を受ける。

そんな妄想を更に上を行く妄想が登場すると劇団ひとりが紹介し、やってきたのは中野知宏さん。自己紹介をお願いすると謎の言語で話し出す中村さん。早速、自作の架空の言語で自己紹介をはじめ、困惑する一同。

もう一度何と言ったのか話して欲しいとお願いする劇団ひとり。ゆっくりと解説しながら自己紹介をする中野さんに「あぁ~」と納得顔のタモリ。早くも劇団ひとりに「流石にまだ理解できてない」とツッコまれる。

中野さんが話したのは「アルティジハーク語」で、中学生の頃から作り出した言語だ。現在は東京大学で言語学を専攻しながら、オリジナルの言語作りに没頭している。

タモリからは「文字もあるんですか?」との問いに「あります」と即答。文法も構造もあると説明。当然、中野さんしか話せる人はいない。

そこでタモリのハナモゲラ語もタモリしか話せないと言う劇団ひとりに「俺のは理論的じゃないから」と素直に白状するタモリ。

続いてアルティジハーク語について「世界は」という意味の言葉「オルナラ」を使って解説。アラビア語の文字と似ており、前にくる文字によって文字の書き方が変化するところが難しいと説明。

「そんなの先生のさじ加減ひとつじゃないですか」と光浦は不満そうであるが、言語には歴史や文化が関わっているので簡単ではないと先生。「英語のエッグ『egg』に見えました」と根本。「あーー、みえ・・・ないですね」と劇団ひとり。

アルティジハーク語は19の母音と17の子音から構成されており、語彙数は500あり、日常会話が可能だそう。「ただし、会話する相手は中野さん以外にいません」と冷たいナレーション。

実際に単語を練習することに。

「アエ:驚いた、うわー」「ジリヤ:助けて」「ニドレーネ:わかる」について中野さんが一通り説明すると、文字の右上の記号についてタモリが言及。中野さんはタモリに「ありがとうございます」と言うと一同爆笑。これはまさに中野さんオリジナルのアルティジハーク語の記号なのだ。ここで発音の練習。再び不明の言語で話し出す中野さんに一同あっけにとられるが、はっと気が付き「今のはリピートアフターミーって…すみません。テンションが上がってしまって」と興奮気味になったことを謝罪。

タモリ、光浦、根本の名前もアルティジハーク語で表記。シャシュショという言葉が無いので、外来語用の文字を「宗子」にあてはめたと説明したところで「そんな細かいところまで」と驚くタモリ。

言語の歴史も含めて言語を作っているので、設定が細かくなるそうだ。

中野さんは架空の惑星「アラモルダル」を作り、その惑星の中の世界がある。アラモルダル星の世界地図も作成しており、現在、200の言語を作り、その中の一つがアルティジハーク語だ。

アルティジハーク語は主にラゴン族の言語。その他にもエスケル語やトオン語などがあり、それぞれの言語に文字がある。

アラモルダルの世界地図と言語分布図を見ながら、興味のある言語を中野さんが話してくれるというので、タモリは「ビュイマー語」を選択するが、のっけから謝る中野さん。ビュイマーは口笛言語だそうで、特定の集団の中で使われている暗号のような特殊な言語だと言う。そこで口笛を吹いてみせ、「『見張り交代しろ』という意味です」と説明。一瞬、間があって爆笑。筒井康隆が指の関節をポキポキ鳴らして会話をする『関節話法』なるものを作ったが、それに近いとのタモリ談。

アルティジハーク語の「カルデ」とは晴れの日の日中専用の挨拶。自然を大事にしている民族なので、天候によって挨拶が変わるそう。ここで根本が秘密の言語であるビュイマー語に魅力を感じており是非勉強したいと申し出るが、ビュイマー族は流れ者集団という設定らしく、中野さんも詳しくは話せないそう。ここでも「何を守ってるんですか!?」と劇団ひとり。

もう一人の妄想の世界の住人は東京芸術大学大学院生の太田剛気さん。架空の国家皇州の皇州相撲の対戦結果(星取表)を披露。現在、50年分・200場所の記録を作成している。

スポーツとしてのルールは日本の相撲と同じで、これまで架空の力士たちを350名以上作り出したそう。また、最高位は横綱ではなく元帥となっていたりと、しくみが異なる。

各取り組みは太田さんの頭の中で対戦させ対戦結果を記録している。

タモリからの「各対戦の決まり手なんかもあるんですか」との質問には「これは私の失敗で決まり手を付け忘れた」そう。

光浦から「名勝負だったなっていうのはあるんですか」との問いには「勝った方が最高位元帥になるという取り組みで「だいしゅんざんみねえもん(大春山峯エ門)」と「いつつどきざん(五戸喜山)」の七番勝負だそう。勝負がつかず、水入りになって、仕切り直したところ、峯エ門が一気に仕掛けてあっさりと勝ち、勝負がついたと説明。

「え?それが名勝負なの?」の問いには「印象に残る勝負ですかね」と答える太田さん。「それこそ、さじ加減でドラマティックな対戦にできるわけじゃないですか」と言われるも、「ヤラセっぽくて好きじゃない」なのだそう。「全部ヤラセだよ!」とツッコむ劇団ひとり。

ここで皇州の歴史の教科書・古代偏が登場。紀元前から650年までの主に政治史をまとめたもの。下剋「我々の歴史の教科書よりも細かくてわかりやすい」と根本。上なども当然あったそうだ。皇州の偉人たちのひととなりについて感心する光浦。

太田さん曰く、皇州の歴史をまずは作り、そこからのスピンオフで相撲があるそうだ。尚、政権のトップが「元帥」であり、皇州相撲の最高位もここから来ているそう。

ここで名元帥も紹介。名元帥とは協会から与えられた称号のようなものなのか?という問いに、「いえ、違います。マスコミが言い出してなんとなく呼ばれるようになったもの」という回答に爆笑。

また、前述の中野さんに皇州相撲について尋ねたところ、「家に帰ってラゴン族のスポーツを考えようと思いました」とあらゆるものを吸収しようとする中野さん。

「悲劇の元帥なんかもいるんですか?」というタモリの問いに「病気で引退してしまって、引退後にすぐに亡くなった悲しい元帥がいる」と回答するも、「悲しいじゃなくて、殺したのは太田さんでしょ!」と劇団ひとり。

「治してあげられなかったんですか?」と光浦が続けると「僕の力ではどうにも…」と答えるも、「いや、どうにでもできたでしょ!」と劇団ひとり。「それはやっちゃいけないよね」と太田さんを擁護するタモリ。ちなみにその力士は「ほうおうばんざん:方央万山」。

今回は非常に濃密で爆笑する事が多かった放送回であった。タモリ倶楽部ほど良質の放送回が多い番組も珍しいが、その中でも特に本放送はタモリ倶楽部史上に残る神回と言えるのではないだろうか。

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