祝!ギャラクシー賞受賞・タモリ倶楽部

我らがタモリ倶楽部は先日、グーグル全面協力の鉄道企画にてギャラクシー賞を受賞した。

個人的には今回の鉄道企画はコロナ禍における苦肉の策が生み出した回、という感想しか無い。しかも今回、一番の功労者は途中から参加したホリプロの南田マネージャーであろう。

今回の鉄道企画に私はそれほど感銘は受けなかったが、タモリ倶楽部には驚くほど良作が多い。その中の一つが2012年に放送された伝説の回「プロジェクト・セックス:性の挑戦者たち」であろう。この放送でタモリ倶楽部はギャラクシー賞を受賞した。

タイトルが物語るように、「NHKのプロジェクトX」のパロディ番組である。番組のオープニングからしていつものタモリ倶楽部とは様子が異なっていた。何しろタモリのお決まりのセリフ「毎度お馴染み流浪の番組…」の挨拶が無い。

なりふり構わぬ寄せっぷりから、このパロディの完成度の高さが伺える。

この放送回でのゲストは映画監督の崔洋一と俳優でも芸人でもない、何をやっているのかよくわからないよく喋る外国人タレント・パックン、司会進行役は乾貴美子であった。ゲストの人選に多少の難はあったものの、元ネタとなった番組へのリスペクトっぷりが余すところなく発揮されていた。

タモリと司会進行の乾貴美子の元になまめかしいラブドールがソファに横たわったまま登場。タモリがラブドールの感触を確かめた後、シリコン製ラブドールの開発秘話に迫る。

医療メーカー「株式会社チェスナット」の元開発部の男性が企画会議で新商品としてラブドールを取り上げたところからこの話は始まる。しかし、皆、ラブドールを製作することに難色を示した。医療器具メーカーの技術者としてのプライドからセックス・グッズの開発に猛反発したのだ。

当初、社内に賛同する者はいなかったものの、何とか「究極のフィギアを作ろう」と技術者たちを説得し、シリコン製の四分の一サイズのフィギアの製作に着手。これが大きな反響を呼び、等身大のシリコン製ラブドールの開発への足掛かりとなった。

人間らしい骨格を維持するため、これまで人形に使う事のなかった金属の骨格を埋め込むことになった。部位によって異なる皮膚の硬さはオイルとシリコンを混ぜ合わせる割合を変化させることによって調節した。

陰毛の研究も進められ、最終的にヤギの毛を使用することが決定した。陰毛特有の縮れを出すため、毛を爪でしごいて植毛するというこだわりようであった。

陰毛の中に隠れたシリコン製の局部については、元々医療メーカーだったこともあり、そう難しいことでは無く、究極の人形の完成は目前に迫った。

だが、開発チームはここで壁にぶつかることなる。リアルな局部を持つ人形はそれだけで「わいせつ物陳列罪」に問われる可能性があることがわかったのだ。

ここで開発を諦めるのか?しかし、ここで諦めてはこれまでの努力が無駄になってしまう。社内で議論した結果、局部は着脱可能なアタッチメント式となった。開発者が唯一妥協した点はこの局部の着脱式だったという。

こうしてリアルを追求したラブドールが完成したのであるが、究極を追い求めてしまい、一体の販売価格が75万円という高額なものとなってしまった。

チェスナット社はラブドール業界においては新規参入者であり、どのくらいの需要が見込めるのか誰も検討が付かなかった。ところが、ふたを開けてみると、予想を超える注文が殺到したという。

開発者の坂井さんは発売当日、プロジェクトが失敗した時の事を考えて辞職を覚悟しており、辞表を忍ばせて勤務していたそうだ。

ラブドール開発に伴う苦悩や葛藤を織り交ぜ、開発者へのインタビュー多め、再現映像多めの力作であった。興味深いのは、10年足らず前の放送であったが、ラブドールのことを始終「ダッチワイフ」と呼んでいたことだ。放送回の中でも説明はあったが、どうやら日本特有の呼び方らしい。

面白くてエロくてちょっとためになる。タモリ倶楽部のよさがギュッと凝縮された放送回であった。

これも本当に名作!

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